PROBLEM

勉強ができなくても問題ない?

勉強ができなくても問題ない?

勉強ができなくても本当に問題ない?

「勉強ができなくても生活に支障はない」と考える人がいるかもしれません。
しかし、実際には逆です。
生活に問題が生じているからこそ、勉強がうまくいかないのです。
時間の使い方が下手だったり、集中が続かなかったり、習慣を作れなかったり。
勉強は、生活力をそのまま映し出す「鏡」だと言えます。
 

支援よりも、できることを増やす

以前、発達障害気味の生徒への対応について、養護教員の方に相談したことがあり、その方はこう言いました。
「発達障害の可能性を本人に伝えて、お互いが理解しあえば、その子が自分を責めずにすむ」
確かに大切な視点ですが、それが正しいとは思えませんでした。
社会に出れば、ミスや忘れ物を「しょうがない」ですませてもらえません。
だからこそ、自分でできることを少しずつ増やしていくことが大切です。
忘れを防ぐためにチェックリストを作る。準備に時間がかかるなら早めに動く。
こうした工夫こそ、将来の苦しみを減らす力です。
 

多くの塾のアプローチの落とし穴

多くの塾は「教科理解の不足」が原因だと考え、先生がかみ砕いて説明し、要点を抜き出し、宿題を毎回確認します。
一時的には成果が出ますが、これは「支えられている間しか続かない」方法です。
高校では教科数も増え、内容も難しくなり、費用も上がります。
つまり、高校の時点で同じようなサポートは得られません。
大学や社会に出れば、サポートはさらに消えます。
最終的には「自分で学び、考え、行動する力」がなければ前に進めません。
 

本当に育てるべき力

必要なのは「勉強内容を得意にすること」ではなく、「勉強に取り組めるようにする力」です。
課題を見つけ、計画を立て、改善し続ける。
この習慣がある人は、どんな段階でも伸びていきます。
 

仕組みを把握する力の欠如がズレを生む

勉強が苦手な子ども同士の会話を聞いていると、お互いの言いたいことがかみ合わないことがあります。
僕が間に入って通訳のように説明したこともあります。
原因は、知識ではなく「話の構造=仕組み」を把握できていないことです。
関係性を捉えられないと、勉強・人間関係・生活のすべてにズレが生まれます。
このズレをなくす力こそ、勉強を通して育てるべき本当の力です。
 

仕組みを読み解く力は勉強にも日常にも役立つ

公式を使って問題を解くのも、状況から解決策を考えるのも本質は同じです。
たとえば、詐欺師のビジネスモデルを見たときに「この仕組みで誰が得をして、誰が損をするのか」を筋道立てて考えれば、「これはおかしい」と判断できます。
実際、僕のもとにも「企業が福利厚生で従業員におすすめの塾を紹介するシステムに登録しませんか?」という話がありました。
お金を払って登録すれば、その「オススメ塾リスト」に掲載され、企業に配布されるという仕組みでした。
僕はすぐに聞きました。
「あなたが一度でもうちの塾の授業を見に来るんですか?」
相手は固まりました。
そこで続けて言いました。
「うちの塾がろくでもない授業をしているかもしれないじゃないですか。チェックもしないのに推薦するんですか?」
企業にとって信頼の喪失は最大のリスクです。
そんな体制が本当に存在するなら、形だけの形式的業務。実際には行われていない可能性もあると考えました。
案の定、相手は説明がチグハグになり、最終的にSEO対策(ホームページが検索の上の方に表示されるようになること)を目的としたよくある会社だと判明しました。
見せかけは「紹介サービス」でしたが、実態は「SEO対策の会社」だったのです。
仕組みを読み解く力があれば、表面上は良さそうに見える話でも、その裏の構造を見抜くことができます。
 

将棋の棋士のように先を読む力

勉強で鍛えられた思考力は、ただ問題を解くためのものではありません。
他の人が1つの意見しか思いつかない場面で、自分はすでに次を考え、複数の案を比較し、可能性を読むことができます。
まるで将棋の棋士が、次の一手だけでなく何手も先を読みながら対局をしているように。
勉強は、日常の判断力を高める「先を読む訓練」でもあるのです。
 

勉強は生活と未来を変える力

見えている世界の解像度が上がれば、同じ日常でも、選べる行動も結果もまったく違ってきます。
勉強がうまくいかないのは、生活の中に問題があるからです。
だからこそ、勉強を使って逆に「生活の仕組みを整える訓練」としてしまえば、未来を確実に変える第一歩になるのです。
 

生き延びるための思考訓練

勉強とは、点数を上げるための作業ではなく、生き延びるための思考訓練です。
詐欺や誤情報、感情に流される風潮。
そうしたものに惑わされず、自分で考え、判断し、行動できるようになること。
その力があれば、どんな環境でも、自分の人生を自分の頭で選び取ることができます。
勉強とは、その力を静かに鍛えるための、最も身近で確かなトレーニングなのです。
大げさな話だと思うかもしれませんが、社会には人を惑わせる「トラップ」が無数にあります。
それに気づけるかどうかで、人生は大きく変わります。
ピンチをきっかけに崩れることもあれば、逆にそれをチャンスに変えることもできるのです。

僕が塾の仕事に妥協できないのは、子どもたちの命がかかっているためです。
そして、時に一歩引いて見守るのも、その命を守るための選択です。
 
思考が、安全な生活をつくる